最高裁判所第三小法廷 平成6年(オ)2470号 判決 1995年7月18日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人徳弘寿男の上告理由について
境界の確定を求める訴えは、公簿上特定の地番によって表示される甲乙両地が相隣接する場合において、その境界が事実上不明なため争いがあるときに、裁判によって新たにその境界を定めることを求める訴えであって、相隣接する甲乙両地の各所有者が、境界を確定するについて最も密接な利害を有する者として、その当事者となるのである(最高裁平成六年(オ)第一七二八号同七年三月七日第三小法廷判決・民集四九巻三号九一九頁参照)。
本件訴訟中の境界確定を求める訴えは、上告人が伊野町字長畑四〇九一番の土地を所有するとして、これに隣接する同所四〇九二番の土地の所有者である被上告人に対し、右両土地の境界の確定を求めて提起したものであるが、原審の適法に確定するところによれば、上告人の所有であった同所四〇九一番の土地全部が被上告人により時効取得された結果、上告人は右土地全部につき所有権を喪失したというのであるから、上告人は右の境界確定を求める訴えについての原告適格を失ったというべきであって、右訴えは不適法な訴えとして却下を免れない。
右と同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、所論引用の判例は、事案を異にし本件に適切でない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原審の認定にそわない事実に基づいて原判決を論難するものにすぎず、すべて採用することができない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 可部恒雄 裁判官 園部逸夫 裁判官 大野正男 裁判官 千種秀夫 裁判官 尾崎行信)